チリのピスコとは?
概要
チリのピスコはマスカットワインを蒸留したスピリッツで、北部のアタカマ州とコキンボ州の2つの特定の地域で生産されたものに限定されます。従来から変わらぬ製法を守り続ける、チリの歴史と文化を象徴するお酒の1つです。
現在、約3,000の小規模なぶどう農家が所有する計10,000ヘクタールのぶどう畑で、年間約3,600万リットルのピスコが生産されています。原料となるぶどうには、チリ北部の砂漠地帯特有の寒冷な夜と日中の強い日差しのコントラストにより、高い糖分が濃縮されています。
チリのピスコには透明なものと、樽で熟成させた淡い琥珀色のものがあります。アルコール度数に基づいて以下の4つのカテゴリに分類され、それぞれ異なる特性と風味を持っています。
- Gran Pisco(グラン・ピスコ):45度
- Reservado(レセルバード):40度
- Especial(エスペシアル):35度
- Tradicional(トラディシオナル):30度
ピスコの製法
①ピスコ用のぶどうの収穫は2月中旬から始まります。収穫時期の判断はぶどうの糖度が想定アルコールが10.5%か、それ以上になったときと定められています。
②収穫されたぶどうは蒸留所に運ばれ、除梗・破砕し、搾汁します。適切に管理された温度下で発酵し、③ワインを醸造します。
④ワイン醸造には、使用される酵母や設備にもよりますが、平均して約30日間要します。その後、単式蒸留器で蒸留します。
⑤ワインは蒸留器に注がれ、沸点に達するまで加熱されアルコールを分離します。このプロセスから得られるアルコールは、「ヘッド(head)」、「ハート(heart)」、「テール(tail)」の3つの部分に分けられます。最も高純度な「ハート」の部分が、ピスコの製造に使用され、仕上がりに求める香りに応じて一回もしくは複数回蒸留されます。
蒸留器の底で得られるアルコールの度数は、約60から73度まで変動することがあります。蒸留は、その年の収穫のワインが完成した直後から始まり、翌年の収穫が始まる前の1月31日までに完了しなければなりません。
⑥蒸留後、少なくとも60日間、ステンレスまたは木製の樽で熟成します(アルコールに香りや色は加えません)。
⑦こうして出来上がったアルコールがボトル詰めされたものがピスコとなります。未熟成のピスコは透明で、木製樽での熟成を経ていないため、ぶどうの純粋な風味が特徴です。一方、熟成ピスコは木製樽で熟成され、ラウリ(チリ固有の木材)、アメリカンオーク、フレンチオークなどの樽材によってウッディな香りと複雑な風味が加わり、色合いも琥珀色へと変化します。